概説日本経済史 三和良一 の試験対策ノートです。
高度経済成長
日本経済史 の勉強にどうぞ
高度経済成長
高度成長の要因
神武景気からいざなぎ景気
・高度経済成長期(1955~1970)の日本の経済成長率は年平均15%程度(先進各国は6~10%)
・神武景気(1955~57)、岩戸景気(1958~61)、いざなぎ景気(1965~70)の3回の好況
・鍋族不況(1957~58)、62年不況、65年不況の不況
→これらの不況は国際収支の赤字に対して金融引き締めが実施されたため
高度成長の市場的要因
①世界的に高度経済成長だった
・世界的な技術革新
・IMF=GATT体制における国際分業・ドル供給の安定
・石油など資源価格の安定
②民間・政府設備投資が盛んだった
・政府主導で膨大な設備投資がなされた
③高い貯蓄率
・軍事支出を抑えて、貯蓄を民間設備に回すことができた
大衆消費社会
・国民総支出で最も大きかったのは、個人消費支出。15年間で3倍に成長した
・消費支出の中でも食費の割合が低下し、耐久消費財への支出が増加した
・一般消費財も増え、合成繊維、合成樹脂(プラ)、合成ゴムなど天然素材に代わって成長した
・食品でもコメの摂取量が減少し、たんぱく質・脂肪の摂取が増えた
・住居もコンクリートのアパート団地が拡大
・個人消費の拡大は戦後改革がもたらした労働者・農民への所得分配率拡大の結果と言える
・また戦後の「民主化」が戦前の階層的消費パターンを解体し、均質的な消費パターンを作り出した
・設備投資によりコストダウン→個人消費が拡大→さらに設備投資という関係を持っていた
三重の技術革新
・高度成長を支えた技術革新
①第二次世界大戦以前から定着していた鉄鋼業や造船業
②戦前日本には定着しなかった乗用車・家庭電化製品
③欧米でも戦後発達した石油化学・エレクトロニクス
旧産業の革新と定着
・鉄鋼業では高度成長期の設備投資を通じて大型化・連続化・高速化が進んだ
・造船業では鉄鋼品質の向上とともに溶接技術が向上→船舶輸出で世界第一位となる
・乗用車生産では1950年代欧州メーカーと技術提携契約を結んだ
・生産工程の自動化を進めた
・家電産業では「三種の神器(テレビ・洗濯機・冷蔵庫)」、「3C(カラーテレビ・クーラー・乗用車)」
・新商品の開発という点で最も顕著な成功
新産業の発展
・石油化学工業は驚異的に成長する
・1957年 初の日本での企業化
・天然素材を代替する形での需要拡大→生産設備の大型化→コストダウン→代替需要の拡大というサイクル
・半導体工業(エレクトロニクス産業)
・1954年 トランジスタ国産化
・テレビ・ラジオ・テープレコーダー・コンピューターなど
エネルギー革命
・主力エネルギー源は石炭から石油へ移行
・石炭産業の急激な斜陽化
経済構造の変化
産業構造の変化
・第一次産業の比重が大幅に低下(特に男子)
・軍需工業は縮小し平和的重化学工業化が進展した
貿易構造の変化
・アメリカ・イギリスの減少に反して、ドイツ・日本は輸出成長
・1970年代までは輸出入の国民総支出構成はドイツよりかなり小さかった
・製品構造において重化学工業が増加
・貿易地位の東南アジアの地位低下・北米比重上昇
・貿易収支は原料・食料品の入超を重化学工業輸出がカバーして均衡を維持している
・1965年移行 日本は資本輸出大国となる
資本構造の変化
・高度経済成長の中心的な担い手であった三井・三菱・住友・富士(旧安田)および三和・第一という非財閥系大銀行を中心に新たな企業集団が形成された
・戦前の財閥とは以下の点で異なる
①銀行の系列融資
②株式の相互持合い
③銅系商社が媒介する集団内取引
④社長会などの人的結合
・企業集団出現の背景
①戦時期の系列融資と戦後の企業再建の関与で銀行と企業の関係が深まった、銀行が安定取引先を求めた
②財閥解体で安定株主を一挙に喪失し、乗っ取りを防ぐために株式を持ち合った
③経営陣が若返り、キャリア未熟さを補うための情報交換が求められた
・企業集団のメリット
①審査コストの節約
②乗っ取り防止
③個人株主への配当を節減、利益の内部化
④社長会が情報収集機能を持つ
⑤新産業への進出や不況産業からの転出に相互協力
※成長率を高めているかは議論があるが、安定成長へ寄与していることは間違いない
・系列は市場取引を内部化し、取引コストを下げるが、一方で外部からの取引に対して閉鎖的になる
中小企業と農業
・中小企業は最大の労働力需要を持った
・繊維や農業から、大企業と直結した系列工場化が進んだ重化学工業
・農村人口は急速に減少した→高度成長のために労働力を提供する役割を果たした
・それでも農業生産は増加した
①改良品種や改良技術
②新肥料
③土地改良などの公共事業の進展
④高性能農薬
⑤農業機械の普及
経済政策の役割
財政金融政策
・社会的資本の整備を進めた
・景気過熱時の金融引き締め政策は効果があったが、自律反転力が強く景気刺激政策はあまり目立たなかった
・財政規模は15年間で6倍以上に拡大
・1965年から赤字国債が始まる
産業政策
輸入制限と外資規制が行われた
・1949年 外国為替及び外国貿易法 輸出統制を撤廃。しかし輸入では規制が続けられた。
・1950年 外資法では日本への直接投資を規制
・1964年 IMF8条国移行とOECD加盟で資本自由化が実施に向かった
税制
・設備投資の促進政策がとられた。例)設備機械輸入・新工場建設の減免措置
・機械工業振興臨時措置法:中小牡蠣部品メーカーなどの技術の向上と経営の安定
福祉政策
健康保険
・1938年 一般国民を対象として国民健康保険法
・1961年 全市町村に国民健康保険の制定
年金
・1941年 労働者年金保険法が制定
・1944年 厚生年金保険法
・1959年 国民年金法 国民皆年金体制がとられる
失業保険
・1947年 失業保険法
・1946年 生活保護法