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桜井久勝さんの財務会計講義をまとめていきます。
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今日は第五章 現金預金と有価証券
ここで登場する単語
現金預金と有価証券
資金運用活動の資産と収益
・販売活動により得られた余剰資金は運用される。それは主に預金・有価証券・貸付金
・流動資産たる現金預金と有価証券の合計は、ただちに支払手段として利用できるので、手元流動性と呼ばれる。またこれに受取手形と売掛金を加えた4資産を当座資産という
・余剰資産の運用成果にはインカムゲインとキャピタルゲインがある
インカム・ゲイン:預金や貸付金から生じる受取利息・配当金
キャピタル・ゲイン:有価証券の売却益と評価益
現金及び預金
現金預金の範囲
・現金:単に紙幣だけでなく、同一の性質を持つものを含む。例)小切手、期限の到来した公社債など
・預金:銀行や信託会社などに対する預金・貯金・掛け金など
現金預金の管理
・出納の記帳が大変なので、小口現金管理することがある
・その金額が一定額に固定されている場合、定額資金前渡性という。
・万一、差額が発生してしまったときには現金過不足勘定を設ける
・また預金のうち、銀行の記録と自社の認識に差額がある場合は、銀行勘定調整表を作成して不一致を明らかにする
有価証券
有価証券の範囲と区分
・有価証券:①株式や新株予約権など、②公社債、③証券投資信託や貸付信託の受益権
・そのほか各種組合などへの出資は、出資金となる
・会社が自社の株式を保有している時、それは自社株式と呼ぶ
・自己株式は資金調達に発行した株式の買戻しであり、資本の減少を意味するから資産とはせず、株主資本からの控除
・有価証券は流動資産と固定資産に分類される。
・流動資産となるのは、①時価の変動により利益を得る目的、②1年以内に満期到来する
・流動資産に分類されたものは有価証券となり、固定資産は投資有価証券となる
有価証券の取得原価
購入による場合
・同じ銘柄の有価証券を取得したときは総平均 or 移動平均などの平均原価法で取得原価を算定する
・有価証券の購入日は約定日基準で処理する。ただし、修正受渡日基準にもできる
・修正受渡日基準:決算日までの時価変動による損益だけが先に認識され、有価証券の移転は受渡日に記録される
払込みによる場合
払込みってなんぞ? → 多分新株発行とかのことだな
・これはルールあり。以下の式になる。新旧株の単価を平均することが目的
新たな単価={(旧株1株当たりの帳簿価額)+[(新株の払込金額)×(旧株1株について取得した新株の数)]}/ 1+旧株1株について取得した新株の数
有価証券の期末評価
評価基準
・期末に保有する有価証券は、企業会計基準第10号により以下の通り3グループに評価される。
分類 | 目的 | 期末の評価 |
第一グループ | 売買目的のもの | 時価 |
第二グループ | 満期保有目的 | 償却原価 |
子会社株式 | 取得原価 | |
上記以外で時価把握が難しいもの | 株式:取得原価 債券:償却原価 |
|
第三グループ | 上記以外で時価把握ができるもの | 時価 |
売買目的有価証券
・評価差額は有価証券運用損益として当期純利益に含める
・ここでいう時価は①市場で形成されたもの、②取引価格がない場合、合理的に算出されたがく
・決算時の時価評価した後の会計処理には2つあるが、主に切放しが使われている
①洗替方式:前期末の評価差額を翌期首に戻す
②切放し方式:翌期首ももどさない
満期保有目的の債権
・売らないから時価評価の必要なし。ただし償却原価法による評価が必要
・償却原価法:債券をその額面金額と異なる価額で取得した際に、毎期一定の方法で、それを調整する。
・額面より安く取得したものを増額していくことをアキュムレーション、逆をアモチゼーションと呼ぶ
・償却原価法には大きく2通りあり、①利息法:実行利子率による複利計算、②定額法:毎期均等額差額ずつ配分
子会社・関連会社の株式
・親会社は子会社支配の目的で保有するので、処分しない
・そのため、これは機械などと同じく事業用資産として考える
・取得原価にて評価する
その他有価証券
・上記いずれにも該当しないものをその他有価証券と呼ぶ
・持ち合い株式などがこれになる
・時価評価が難しい場合は、取得原価で評価する
・時価評価できる場合は、時価で評価するが、売買の可能性が非常に低いのでその他有価証券評価差額金という名称で直接計上する
・これを純資産直入という。これには2通りある
・全部純資産直入法:銘柄別の評価差額と評価差損を相殺した残額を計上する方法
・一部純資産直入法:評価差益のみ純資産に計上し、評価差損は損益計算書に参入する←保守主義の原則に合っている
・いずれにしても洗い替え方式が適用される
・これをするとクリーンサープラスが守れなくなるので、その他包括利益として把握することが必要
有価証券の減損処理
・取得原価や償却原価の時は以下の場合に、減損処理が必要になる
①時価の把握が可能な有価証券について、その時価が著しく下落したとき
②上記時価の把握が難しく、その発行会社の財政状態悪化につき実質価額が著しく低下したとき
・この場合、切放しを使う
デリバティブとヘッジ会計
デリバティブの意味と種類
・借入金の利子率変動、為替変動、さらには企業が余剰資金を株式投資に利用する際には様々なリスクがある。これを回避する手段をデリバティブと呼ぶ
・デリバティブの分類 資産の観点
①株式、②債券、③金利、④外国通貨、⑤商品
・デリバティブの分類 経済的機能の観点
①先物取引:将来に受け渡しする金額をあらかじめ契約しておく
②オプション取引:将来購入する権利を売買し、権利の買い手は行使することも放棄することもできる
③スワップ取引:2つの企業が債券の利子などを将来受け取る権利を現時点で交換する
デリバティブ取引の会計
・デリバティブ会計の特徴
・契約に伴って生じる債権と債務について、契約決済時点ではなく、契約の締結時点にその発生を認識する
・時価で評価した正味の債権または債務の金額を、貸借対照表に資産または負債として計上する
・先物取引によって、株式の現在価値が低下してもその損を減殺することができる。この取引をヘッジ取引と呼ぶ
ヘッジ会計
・ヘッジ取引において相場変動による損失の可能性を回避する対象項目をヘッジ対象と呼ぶ
・その目的に使われデリバティブをヘッジ手段と呼ぶ
・ヘッジ対象から生じる損益とヘッジ手段から生じる損益を同一会計期間に計上する必要がある
・これは常に自動で達成できるわけではないので、調整するにはヘッジ会計が必要になる
・ヘッジ会計が適用できるのは、①ヘッジ取引が企業のリスク管理方針に従っていること、②ヘッジ取引時以後もヘッジ手段効果が定期的に確認できること
・ヘッジ会計には2種類ある
①繰延ヘッジ会計:時価評価されているデリバティブなどのヘッジ手段の損益をヘッジ対象項目の損益が認識される会計期間まで純資産の部に繰延ヘッジ損益として繰り延べる方法
②時価ヘッジ会計:ヘッジ対象の損益を当期に繰り上げて計上することで、時価評価されているヘッジ手段と同一期間に認識できる
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キャッシュ・フロー計算書
資金情報の必要性
・財務諸表の中でも損益計算書は重視される
・しかし、現金収入の余剰を生み出す能力や債務返済能力を評価するにはキャッシュ・フロー計算書が必要になる
キャッシュフロー計算書に期待される効果
①発生主義会計によって測定された利益額に、どの程度資金的な裏付けがあるか示して、利益の品質を明らかにする
②資金繰りの観点から企業の安全性の評価に役立つ情報を提供する
資金の概念
・資金の概念には様々あり、運転資金を資金とも見れる。
・しかし、運転資金には商品や売掛金など最終的に回収された資金とは言えない項目が含まれるため必ずしも最適ではない
・現金やそれに非常に近いものだけをキャッシュフローの対象とすることが一般的
・したがって、日本では現金と現金同等物に限られる
・現金:当座預金・普通預金・通知預金なども含まれる。
・現金同等物:容易に換金できてリスクが少ないもの。3カ月以内定期預金など。株式はリスクが大きいため含まれない
キャッシュ・フローの区分表示
・企業活動は、①営業活動、②投資活動、③財務活動という3つに分類される
・営業活動:企業が主として営なむ事業に関連する活動(売上、仕入れ、人件費などの支出)
・投資活動:設備投資、証券投資、融資の3つから構成される(有価証券・固定資産・貸付金など)
・財務活動:資金の調達と返済(主に新規借り入れや社債発行)
キャッシュフロー・計算書の作成方法
・直接法:期中の収入額と支出額の総額を記載することで、期中における資金の増減を直接的に明らかにする
・間接法:損益計算書の当期純利益に調整を加えることにより、期中の資金変化額が間接的に明らかになる
直接法による作成
・直接法では資産勘定の期中の増減を要約して作成できる
・これは損益計算書からも作成できる
間接法による作成
・収益と収入の食い違い分、あるいは費用と支出の食い違い分を調整することで発生主義利益を現金主義の収支差額へ変換する
・このメカニズムは以下のように説明できる。ここから資金=現金と定義する
財務諸表から
現金+その他資産=負債+資本
となる。従って、
現金=-(その他資産)+負債+資本
となる。
現金の期中変化額は
⊿現金=-⊿(その他資産)+⊿負債+⊿資本
ここから、
⊿現金=-⊿(売掛金+商品+備品)+⊿負債+⊿資本
SAPメモ
ここからはITコンサル向けのメモです。
自分向けの雑記なので、あまり信用しないように。
・ちなみに、SAPでは会社別のキャッシュフロー・計算書しか標準にはない。間接法という名称だが、発生源を抑えられるので教科書的には直接法に近い。FSCMを導入すれば直接法もできるが、仕訳パターンを網羅する必要があり、徐々に育てていくのがベター。また、その場合にはクエリ作成が必要。一生懸命導入した割に「未分類」みたいなところに入れられてしまい、あまり日の目を見ないことが多い。
・事業部ごとのCFが欲しいといわれたら、一応事業領域を使えば可能だが、会計伝票への入力項目が増えるのと、あくまで事業部。部署ごとや好きな単位でというのは難しい。外で手で計算してください。利益センタをゴリゴリアドオンでどこかの項目に持たせるなどか。
また、事業領域を使うところは少なくなっており、消えていくのではないか。ここのためにカスタマイズや入力制御を増やすべきかはちゃんと考える必要がある。