日本経済史の分野別深堀です。
今日は 銀行業の産業組織と産業・企業金融 について。
参考資料はこちら
日本経済の歴史4 近代2 第一次世界大戦期から日中戦争前(1914~1936)
岩波書店
目次
銀行業の産業組織と産業・企業金融
戦前日本の金融システム
・日本の金融業に関する研究蓄積は多い
・1957 加藤:日本の銀行全体は「機関銀行」である。機関銀行とは特定の企業と密接な関係を持ちそれらの限定された数の企業に長期融資する銀行のこと。これは工業化が遅れた、ドイツ・日本において、効率的な金融システムが求められた結果とされる。
・1960年代 石井:製糸金融の研究。横浜の生糸売込問屋による前貸し金融が製糸業を発展させ、さらに地方銀行ー大都市銀行ー日本銀行という階層的なネットワークの構図を描き出した
などなど
この後
第二節:戦前期の産業金融における銀行の役割
第三節:銀行経営・金融システム
第四節:1920年代の銀行退出とその影響
第五節:まとめ
金融システムの長期的概観
・戦前も戦後も借入金による資金調達額は大きかった
・しかし、戦前は株式による資金調達が大きかったためその意義は異なる
・非大企業は株式よりも借入金の萌芽大きい割合
・特に銀行からの融資は受けれないため、個人、問屋などからの融資が大きい
銀行業の産業組織と機関銀行
銀行業の市場構造
重層的金融構造
・総資産1億円超の大銀行が存在する一方で、資金規模100万円以下の小規模銀行が分厚い分布
・この階層は1900年前後に形成され始め、第一次世界大戦期に展開・定着した
銀行と企業の取引関係
機関銀行関係の銀行経営への影響
・銀行と企業で役員を兼任しているものが多く、1926年時点では両者の結びつきは密接だった
↑銀行と企業の役員の照合、またROEは機関銀行の方が低かった
企業金融への含意
・機関銀行では関連企業への融資条件が緩かったとされる
・銀行の融資政策が関係企業によって影響を受け、銀行にとって望ましい金額を超えた過大な融資が関係企業に対して行われていたことがわかる
銀行退出の波と金融システムの変化
銀行退出の波
・1920年代は金融システムが不安定化したことを背景に民間銀行の退出が進む
・政府は銀行合併を促進する政策を強化した
・1890年代以降急増した銀行は、小規模が多く信用が低かった。また銀行間競争が金融システムの不安定性をもたらした
・最低資本金は100万円に引き上げられた
・その結果、1926年に1420行存在した銀行は1927年銀行法の公布ののち激減した
合併の銀行経営への影響
・合併は預金の増加をもたらした
・しかし、ROAではマイナスに働いた。これは合併時にいったん両行を解散するケースに見られた。再建にコストがかかるからと解釈される。
機関銀行関係の変化
・銀行減少後、兼任役員数は増えた。
・一方で、銀行の経営条件は改善された。(貸し出しが厳しくなった)
・つまり、銀行の解散・破産・廃業を通じて、役員兼任関係を持つ銀行が淘汰されたが、兼任役員に関しては特に関連がない。
地域金融の変容
・銀行の合併により、資金の流れが変化した
・中小企業は資金調達がしにくくなった
・地方銀行は統合により、都市のための預金吸収店舗となった
金融システムの構造・機能・進化
今日のまとめになる部分
・近代日本の銀行産業は、大企業以外を中心に大きな役割を持った。
・産業組織制度と顕著な特徴があった
①重層的金融機構:様々な規模の銀行が存在し、それらが規模に応じた階層を形成していた
②機関銀行関係:企業と取引関係を言形成する際に、特定の銀行と特定の企業が密接に結びついて融資していた。これは企業の資金調達にはプラスとなるが、経営指標はマイナスを示すことが多かった
・1920年以降はこれらの銀行が退出する
・組織統合にコストがかかりマイナスとなったが、金融システムは安定し、企業との関係も健全になった
・地方から都市への資金流出を懸念して、地方銀行での合同を推進したが、県内で同様の資金の流れを起こした