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今日は第7章 棚卸資産と売上原価
新しい収益の認識基準はSAPにも関連するのでSAPコンサルの方はこの章だけ読むのはありだと思います。
ここで登場する単語
棚卸資産と売上原価
棚卸資産の範囲と区分
・売上高の貢献は基本的に売上原価が担当する。
・売上原価は棚卸資産の販売によって発生する。
・そのため棚卸資産の会計は利益計算で中心的な役割となる
・棚卸資産:売上収益を上げるために払い出しを予定している資産。以下のいずれかに該当するもの
①通常の営業過程において販売するための資産。代表は商品と製品。
商品:完成品を購入したもの
製品:自社生産したもの
②販売目的として現に製造中の資産。未完成のまま販売できる市場があるものは半製品、市場がないものは仕掛品
③販売目的の財を生産するために消費する資産。原材料のこと
④販売活動と一般管理活動において短期間に消費する資産を貯蔵品という。工場用消耗品や消耗工具器具備品など。
棚卸資産の取得原価
・棚卸資産をはじめ将来費用となる資産の会計は原価決定(購入)・原価配分(売原と次期繰越)・期末評価(期末評価)という3つの論点がある
購入した場合
・棚卸資産の取得原価は購入代価に不随費用を加算して決定する
・不随費用は副費とも呼ばれ、企業外部で発生する副費と企業内部で発生する副費がある
外部例)購入手数料、運賃など 内部例)購入事務費、保管費など
・また仕入値引きや仕入割戻を受けた場合は購入代価から控除する。仕入割引は金利の性質を持つため営業外収益として扱う
自社生産の場合
原価計算
・原価計算の基準は企業会計審議会の「原価計算基準」
・大きく3つある
①実際原価計算:財やサービスの実際消費量と実際の取得価格を用いて製品の原価を計算する方法
②標準原価計算:財やサービスの消費量を科学的・統計的に測り予定価格を用いて原価を計算する
③直接原価計算:製造に要する諸費用を生産量に比例して発生する変動費と生産量が変化しても発生しない固定費に分類して変動費だけ製品原価計算委利用する
・財務諸表で認められているのは実際原価計算と標準原価計算。
・標準原価の場合は実績との差額を調整しなくてはならない
製造原価明細書
・製造業では生産コストは経営成績に影響するので、開示制度の中に製造原価明細書を必要としていた
・しかし、セグメント情報の開示を条件にこれは不要とされた。多角化の中で親会社の生産コスト情報が有用性に乏しくなったため
棚卸資産の原価配分
払出数量の把握
・商品や製品には売上原価になる部分と翌期に繰り越す部分がある
・これを棚卸資産の原価配分という
・2つのやり方がある
棚卸計算法
・払出数量=期首棚卸数量+当期受け入れ数量ー期末棚卸数量
として計算する
・つまり期中は入庫数量を記録し、期末に棚卸をして実際の残数を把握し、引き算で払出量を算出する。
・これを棚卸計算法という
継続記録法
・実際に使われるのはこっち。
・継続記録法:常に資産ごとに在庫長を作成し、受入・払出を記録しておけばいつでも数量がわかる
・ただし実際に正しいかは現物を見ないといけないので期末には確認がある。(後述)
売上原価の計上
販売ごとの形状と期末一括計上
・売上原価は売上収益の関係を、特定の財やサービスを媒介として直接的に識別できる点で特徴を有する
・このような対応関係を個別的対応と呼ぶ
・収益との個別的対応が可能な売上原価のような項目は、売上計上ごとに同時に計上することが基本原則。
売上原価の仕訳処理
・販売都度売上原価を計上する場合は、商品勘定 → 売上原価勘定
・期末に一気に計上する場合は、 仕入勘定 → 売上原価勘定の仕訳なし → 期末に残商品分を仕入勘定を繰越商品勘定に振り替え&売上計上
基本は全社が使われる
払出単価の決定
取得原価を基礎とする方法
個別法:単位当たりの取得原価が異なる個々の資産をそれぞれ管理する。
・メリット:正確に管理できる
・デメリット:多大な手数がかかる、示威的に利益操作の可能性がある
・適用イメージ:高価で個別に管理するべき商品に使う。貴金属類とか?
先入先出法(FIFO):一番古いものが払い出されたとみなす。ちなみに、ファイフォと発音できると通っぽい。
・メリット:ふつう古いものから出すので実態に近い。期末は時価に近い評価がされる。
・デメリット:物価の変動などは考慮されない
・適用イメージ:結構いろんな業界で使われそう。在庫の回転がある程度速いとか?
後入先出法(LIFO):後に入れたものから先に出すとみなす
・メリット:売上高と売原が同一の価値水準で対応付けられる
・デメリット:期末資産価値が遠い過去のものになる
・適用イメージ:2010年以後は認められない
総平均法:取得した平均原価を計算して払出をする
・メリット:1回の平均値計算で算定できる
・デメリット:1年が終了しなければ実施できない。そのため売上と売原を同時に仕訳記帳できない
・適用イメージ:移動平均の方がいいんじゃない?
移動平均:棚卸資産の受入ごとに平均しなおす
・メリット:売上と売上原価を同時に記帳できる
・デメリット:処理がものすごく煩雑
・適用イメージ:システムにやらせよう
最終仕入原価法:期末の最も近いものを原価とする
・メリット:計算も何もいらないし楽ちん
・デメリット:1回で全ての原価が決まるので、現実と乖離する可能性
・適用イメージ:採用企業は少なくない。しかし期末棚卸資産に重要性が乏しい倍においてのみ認められる
==SAPメモ==
ちなみにSAPは期中に移動平均か標準原価です。ロット管理すれば個別原価も可能です。
期末はそれらの情報をもとに好きに計算してください
==
予定価格等を用いる方法
・企業は実際の原価とは別に予定価格や正常価格を設定し、棚卸資産の払出単価として利用することがある
・その場合原価差額が生じる
・これは期末に案分が必要
売上原価還元法
・売価還元法:小売棚卸法とも呼ばれる。期末棚卸品の金額をグループにて区分し期末金額を算定する方法
棚卸資産の期末評価
棚卸減耗費
・棚卸減耗費:実地棚卸と帳簿価格が異なる場合原価配分法などで案分して処理する
・棚卸減耗には原価性があるものとないものがある。
・原価性があるものとは、毎期反復的に正常な数量で発生するもの
・つまり、原材料などは製造原価に参入し、商品や製品に関するものであれば売上原価または販売費に含める
・他方原価性がないものとは、臨時的・または異常な原因で大量に発生したものをいう
・これらは売上収益の対応関係がないので特別損失にする。影響が小さいなら営業外費用でもよい
販売目的で保有する在庫の棚卸評価損
・棚卸評価損:取得原価よりも価値が下がっているものを指す
・①物理的劣化、②経済的な劣化、③市場の需給変化に起因して売価が低下したもの
・企業会計原則では①、②は必ず認識するよう求めてきたが、③については計上しないことができる
・つまり③のケースは時価が下落しても取得原価で評価する原価基準と、期末の評価と帳簿価額の低い方に合わせる低価基準がある
・期末の評価として、帳簿価額と比較するのは正味売却価額を指す
・各品目をそれぞれ行うのが原則だが、場合によってはグループ化も可能
・評価差は洗い替えと切放しがある
・洗い替え方式:翌期に振り戻す
・切放し方式:翌期に振り戻さない
トレーディング目的で保有する在庫の期末評価
・販売用不動産など
・これらは期末時点の時価で貸借対照表に計上し差額は売上高とすることで当期の損益として計上する
仮想通貨
仮想通貨は約定日基準で処理される
割愛