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財務会計講義11 株主資本と純資産

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日本一読まれている財務会計テキスト で有名な

桜井久勝さんの財務会計講義をまとめていきます。

 

スマホで見れるノートとしてご利用ください。

 

今日は第11章 株主資本と純資産

 

 

 

ここで登場する単語

貸借対照表、株主資本、払込資本、留保利益、資本金、資本準備金、その他の資本剰余金、資本剰余金、資本取引、利益剰余金、損益取引、発行可能株式総数、株式払込剰余金、普通株式、優先株式、劣後株式、増資、実質的増資、形式的増資、新株式申込証拠金、新株予約権、ストック・オプション、株式報酬費用、株式分割、株式無償割当て、減資、実質的減資、形式的減資、資本金減少差益、自己株式、企業結合、合併、取得、持分の結合、パーチェス法、持分プーリング法、のれん、負ののれん、株式交換、株式移転、持株払込、分割、分割会社、承継会社、簿価引継法、移転損益、売買処理法、留保利益、繰越利益剰余金、剰余金、中間配当、配当金、法定準備金、任意積立金、役員賞与、剰余金、分配可能額、のれん等調整額、連結配当規制適用会社



株主資本と純資産

 

純資産の構成

 

株主資本と純資産 の関係

 

・資産と負債の差額は純資産として貸借対照表に記載される

・個人企業では純資産=資本金のみだが、株式会社では出資者たる株主に帰属する、株主資本と「その他の要素」に分類される

 

資本の源泉別分類

 

・株式会社の純資産と資本はそれが生じてきた源泉に従って以下に分類される

 

株主資本 資本金
(払込資本)
資本剰余金
(払込資本)
資本準備金(持株払込剰余金など)
その他資本剰余金(減資差益、自己株式処分差益など)
利益剰余金
(留保利益)
利益準備金
その他利益剰余金(任意積立金、繰越利益剰余金)
その他の要素 評価・換算差額など
新株予約権

 

・株主資本は払込資本留保利益に大分される

・払込資本はすべて資本金とするのが原則だが、会社法に基づいて資本金にしなかった部分は資本準備金として分類される

・資本準備金はさらに、その他の資本剰余金に分類される

 

剰余金の区別

 

剰余金は以下の2通り区別する

 

資本剰余金:資本取引から生じた剰余金

資本取引とは企業の自己資本を直接的に変化させることを目的として行われる取引

 

・②利益剰余金:損益取引から生じた剰余金

損益取引とは企業が利益獲得を目指す取引であり、結果として株主資本が変化する

 

・債権者保護を考慮すると、配当は資本流出のため留保利益に限定すべきのようだが、以下の理由により許可されている。

  1. 留保利益として分配可能なはずの利益準備金を配当可能な部分から覗いている。これにより拘束される資産額が同額だけ増加する結果、債権者保護は一層強化される。→あらかじめ利益準備金はとっておいてるか大丈夫。
  2. その反面、「その他資本剰余金」が分配可能額に含められている点はある。

配当制限については後述

 
 



 

 

払込資本

 

会社の設立

 

・株式会社は事業や社名などを定款として作成し、資本の払込を受け入れたのち、設立登記する。

・定款には会社が発行できる株式の総数(発行可能株式総数)も定められているが発行時に4分の1のみ発行すればよい。

・残りは取締役会で追加発行を決定したり、株式発行総数を株主総会で上げることができる。

・これを授権資本という

 

・株式の払込金額はその全額を資本金とするのが原則であるが、2分の1までは資本金としないことができる

・この資本金にしなかった部分を株式払込剰余金と呼ぶ

・これをする理由 → 株式会社は資本金の4分の1を資本準備金と利益準備金として積み立てなくてはならない(会社法) → この拘束を減らしたいので資本金は少なくしておきたい。

 

・株式を取得したものは株主となる

・株式には普通株式のほかに、配当や残余財産の分配に関して優先される優先株式や、その逆の劣後株式がある

・この他株式には譲渡制限株式や取得条項付株式がある

 

増資

 

・株式会社が資本を増加させることを増資という

実質的増資:会社の株主資本の増加に伴う

形式的増資:内訳が変化するだけ(資本準備金を資本金に組み入れるなど)

 

通常の新株発行

 

・会社はまず、募集株式の引受人から受け入れた資金を、新株式申込証拠金として記録する

 

設例)新株式100株を8万円で公募した。全額受入て別段預金とした

別段預金 80.000 / 新株式申込証拠金 80,000

 

新株予約権の権利行使

 

新株予約権とは、その会社の株式の交付を受けることができる権利。普通社債にこの権利を付加して、転換社債と新株予約権付社債がある。

・会社は新株予約権をストック・オプションとして利用することもできる。優秀な人材に渡しておいて、株価が上昇したときに株価を取得できる権利のことを指す

・ストック・オプションが労働の対価として付与される場合、付与された時点からその公正価値に基づいて株式報酬費用(人件費)を計上する必要がある

 

株式交付による吸収合併

 

・純資産と資本金の両方が増加する(後述)

 

株式交換や株式移転による完全子会社化

 

・親会社の純資産と資本金の両方が増加する(後述)

 

資本準備金・利益準備金の資本金組み入れ

 

・会社は株主総会の決議により、資本準備金や利益準備金を資本金に組み入れることができる

・これは形式的増資である

 

・新株式が完全に無償で公布される、および一部が有償とされる場合、1株当たりの純資産額は減少するので、株式分割、または株式無償割当てに該当する

 

その他資本剰余金・その他利益剰余金の資本金組み入れ

 

・上と同様に形式的増資。

・その他利益剰余金を利益準備金に組み入れることは可能

・しかし、その他利益剰余金から資本剰余金の組み入れなどは、資本剰余金と利益剰余金の混同になるためできない。
 



 

 

減資

 

減資は資本金を減少させる取引

・債権者保護のために非常に厳しい条件がある

 

・減資も実質的減資形式的減資がある

・会社が事業を縮小させ株主に現金還元すれば実質的減資、事業不振による赤字で利益準備金と相殺したときには純資産は変化しないので形式的減資に該当する

 

・減資で減少する資本金が株主に返還される資産額や、計算上の相殺を上回る場合、資本金減少差益という

 

自己株式

 

・会社が自社の株式を取得している時、自己株式という

 

・自己株式は第三者への売却や、転換社債・新株予約権付社債、ストックオプションに使われる

 

・自己株式については資産説と資本減少説がある。

・会社計算規則では資本減少説に立脚している

・一方で自己株式の売却は資本増加に該当するから資本剰余金の性質を持つが、資本準備金には含まれていない。したがって、その他資本剰余金に該当する

 

組織再編 会社の結合と分割

 

再編の目的 吸収型再編 新設型再編
1.会社の合併 吸収合併 新設合併
2.親子関係の形成 株式交換 株式移転
3.会社の分割 吸収分割 新設分割

 

合併

 

企業結合の種類と経済的実体

 

・ある企業と他の企業が1つの報告単位となる会計実体へと結合することを企業結合という

合併には吸収合併と新設合併がある

 

・また、合併は経済的実体により、取得と持分の結合の2つのタイプがある。

取得:当時企業の一方が他方を支配するタイプ

持分の結合:統合されるいずれの企業の株主も他方を支配したといえないもの

 

・取得のタイプの企業結合では、被取得企業の株主が一旦投資を生産し、改めて負債・資産を時価で測定した再投資額によって、取得企業に現物出資たいと考えられる。この会計処理をパーチェス法という。

・他方、結合当時企業の持ち分が継続していると考えられる「持分の結合」に該当する場合は、結合当時企業の貸借対照表の各項目を帳簿価格で引き継ぐ持分プーリング法によって処理する。

 

パーチェス法 持分プーリング法
消滅会社の資産と
負債の引継ぎ
資産・負債として個別的に識別された項目のみ引き継ぐ すべて存続会社が引き継ぐ
引継ぐ資産と負債の評価 時価評価として引継ぎ、対価との差をのれんとする のれんは発生しない
消滅会社の株主資本の内訳 引継ぎはせず、資本金繰入額以外は資本剰余金とする 利益剰余金を含めそのまま存続会社が引き継ぐ

 

要は取得は身売りで持分の結合は合体だね

 

・取得→パーチェス法

・持分の結合→持分プーリング法

 

 

パーチェス法の原則化

 

・持分の結合に該当するには以下の3要素が必要

  1. 企業結合の対価がすべて議決権付き株式であり、
  2. 両者の株主が結合後の企業で有することになった議決権比率がほぼ50%であり、
  3. 議決権比率以外の支配関係を示す事実が存在しないこと

・要は、両者に上下関係がないことをはっきりさせろってことですね。

・しかし、現実にはこれを満たすことはまれ。

・また国際的には持分プーリング法は廃止されている

 

・日本では主に以下のケースでのみ適用される。これは法律上の組織形態が変わるだけで、支配関係に変化がないと判断できるから

共同支配企業の形成

 

 

共通支配下の取引

たとえば、親会社と子会社の合併、同じ親会社の傘下にある子会社同士の合併など

 

取得企業の決定

 

・パーチェス法を採用するには取得企業がどれか特定しないといけない。通常は支配を獲得した側の企業とする。

・しかし、明確に決定できないときには追加的に提示された基準を適用する。つまり、

①対価として現金その他の資産を引き渡したり負債を引き受けた側の企業

②対価として自社の株式を交付した側の企業

③総資産額や売上高で見た時に相対的に規模の大きい企業

 

・逆取得(後述)のようなケースもあるので、総合的に判断しなくてはならない

 

パーチェス法の会計処理

 

・被取得企業の資産と負債は時価で評価される

・支配企業は、支払対価に自社株式とする場合、実際の企業結合日の株価に基づく算定額が取得原価となる

・法律や会計など、合併に基づき支払った報酬や手数料は発生年度の費用として処理する

 

・引き継いだ資産よりも取得原価の方が大きい場合はのれんとして会計処理する。

・取得原価の方が小さい場合は、負ののれんとして処理する

 

・のれんは無形固定資産として計上する

・その価額の持続性は、①のれんの源泉である超過収益力が徐々に消滅するため、規則的な償却が必要とする見解と、②低下しない場合があるとして、規則的償却ではなく、減損会計の適用で対処しようとする場合がある

・日本では①に立脚し、20年以内に定額法などで償却しなければならない

 

・負ののれんは、①負債として計上して規則的に償却すべきという見解と、②有利な取得原価として企業買収したとして利益計上すべきという見解がある。

・日本では、発生年度の特別利益として処理する

 

・合併によって増加する資本金と資本準備金は存続会社が合併契約の定めに従って決定する。

 

株式交換と株式移転

 

株式交換:100%子会社の株式を取得し、完全子会社とする。もともと子会社の株主だった人には親会社の株式と交換してあげる

株式移転:株式交換の中で特に、親会社が新設会社の場合を指す

 

 

・なお、P社が保有する子会社株式の金額が、P社の資産総額の半分を超えると、P社は独占禁止法上の持株払込となる

・親会社は企業結合の会計処理が必要だが、子会社側は株主が変わるだけなので、会計処理は不要
 



 

 

会社の分割

 

・会社法の規則に従って、会社の事業の一部を分離することを会社の分割という

 

分割会社(分離元会社のこと)は純資産が減少するため承継会社(分離先企業のこと)の株式が対価として交付される

 

・分離元企業が受け取った対価が、分離先企業の株式だけであり、かつ分離先企業が子会社や関連会社に該当する場合は、株式所有を通じて移転した事業への投資を引き続き行っていると考えられる。したがって、この場合は単に組織形態が変化したに過ぎないので、合併時の持分プーリング法に相当する、簿価引継法を採用する。

 

・他方、現金を受け取るなど、明らかに事業の売却によって投資が生産されたとみる場合は、時価で計上し、事業の帳簿価額と純資産の差額を移転損益として計上する。これを売買処理法と呼び、合併時のパーチェス法に相当する

 

稼得資本 留保利益

 

留保利益と剰余金の関係

 

留保利益は企業が獲得した利益のうち出資者に分配されずに企業内に蓄積された部分である

 

・企業活動の結果として当期純利益が獲得されることによって増加し、株主への配当によって減少する

 

・出資者が無限責任を負担する個人企業では、維持すべき元本たる資本と分配可能な利益を区分する必要がないため

損益 1,200 / 資本金 1,200

 

・株式会社では、元本として維持すべき資本金を明確にするため、元本たる資本部分と分配可能な利益区分が峻別されなければならない

・このため、次の仕訳によって繰越利益剰余金勘定へ振り替えられる

損益 1,200 / 繰越利益剰余金 1,200

 

・株主への配当は、この繰越利益剰余金から分配するのが一般的だが、任意積立金として取り崩しても良い(その他利益剰余金になる)

・また、その他資本剰余金からも配当を行うことができる

・その他資本剰余金とその他利益剰余金を合わせて「剰余金」と呼び、配当規制などの中心概念として活用する

 

・剰余金の使途は以下の通り

  1. 資本金への組み入れ
  2. 資本準備金または利益準備金への組み入れ
  3. 損失の処理や任意積立金の積み立てなど
  4. 株主に対する剰余金の配当

 

 

剰余金の配当

 

中間配当は1事業年度のちょうど中央の日を基準として株主に金銭を分配することをいう

 

・株主への配当金は剰余金処分のうち最も重要である

・会社法では株主への配当の10分の1を資本準備金または利益準備金として積み立てることを要求している。

・その他資本剰余金から配当した場合は資本準備金に、その他利益準備金から配当した場合は利益準備金を積み立てる

・ただし、資本準備金と利益準備金の合計額が資本金の4分の1に達すれば、その必要はない

・資本準備金と利益準備金は会社法で定められた準備金という意味で、法定準備金といわれる

 

・利益準備金が会社法によって強制されるのに対して、企業が自分の意志で積み立てる項目を任意積立金と呼ぶ

・圧縮記帳積立金や特別償却準備金、海外投資等損失準備金が該当する

役員賞与は留保利益から処分されていたが、その処理は廃止され、費用に計上することとなった

 

会社法の配当制限

 

制限の趣旨と対象

 

・株式会社では株主の有限責任の制度が採用されているため、債権者の権利は会社の純財産によってのみ保証されるにすぎない

・したがって配当などで純資産が無制限に流出すると債権者の権利を害す可能性がある

・そのため分配可能額を法廷で定めている

 

剰余金の範囲

 

剰余金の範囲を明らかにしたうえで、これを基礎として分配可能額を規定する

 

分配可能額

 

分配可能額を規定する

 

①自己株資金関する調整

・よくわからない。年次決算を経ない限り、その社外流出を認めない

 

②臨時決算を行った場合の調整

・純損益を分配可能額に反映させることができる

 

③追加的控除額には主要な項目が4つ

    1. のれん等調整額:[のれん÷2+繰延資産]の金額はのれん等調整額と呼ばれる。このうち繰延資産は換金価値を持たないため債権者保護の裏付けになりにくい。したがって対象から外さなくてはならない。
    2. 「その他有価証券評価差額」金と「土地再評価差額金」:これは分配可能額に算入されない
    3. 連結配当規制の任意適用額:親会社が損失を子会社に押し付けて分配可能額を捻出できるが、望ましくない。そのため、会社が連結貸借対象表も考慮した配当規制を選択することを許容している。これを連結配当規制適用会社という
    4. 300万円不足額:会社の純資産が300万円を下回る場合、剰余金の配当はできない

 



 

損失の処理

 

・損失が計上されたときは過年度の利益と相殺し、相殺しきれなかった分は繰越損失となる

・繰越損失は任意積立金取崩益で補填する。補填できない場合は、その他資本剰余金から取り崩し、続いて、利益準備金・資本準備金の順に取り崩す。それでも補填できなければ、将来の純利益で補填するか、減資して資本金を減らす必要がある。

 

 

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