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桜井久勝さんの財務会計講義をまとめていきます。
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今日は第13章 連結財務諸表
ここで登場する単語
個別財務諸表、連結財務諸表、連結計算書類、連結配当規制適用会社、連結納税制度、親会社説、経済的単一体説、連単分離、連結精算表、持株基準、支配力基準、親会社、子会社、特別目的会社、連結子会社、非連結子会社、連結会社、連結決算日、評価差額、のれん、連結調整勘定、負ののれん、非支配株主持分、全面時価評価法、一部時価評価法、買入のれん説、全部のれん説、資本連結、一括法、段階法、未実現損益、一時差異、法人税等調整額、繰延税金資産、繰延税金負債、連結株主資本等変動計算書、確定方式、繰上方式、持分法、非連結子会社、関連会社、影響力基準、共同支配企業、持分法、連結キャッシュフロー・計算書、関連当事者、セグメント情報、マネジメント・アプローチ、事業セグメント、報告セグメント、
目次
連結財務諸表
連結財務諸表 の公表制度
連結財務諸表の必要性
・企業は集団で存在している
・個々の企業を会計単位とするものを個別財務諸表
・企業の集団で作成するものを連結財務諸表と呼ぶ
制度会計における位置づけ
・金融商取引法がもっとも古くから連結財務諸表を求めてきた。これは投資者の意思決定に必要だから
・近年では、会社法上の大会社は連結計算書類の報告が必要
・通常会社法では親会社単独の計算書類に基づき配当可能額が決まる
・しかし、子会社が業績悪いときに厳しい配当規制することを会社は選択できる
・これを連結配当規制適用会社という
・法人税も連結納税制度を選択できる
連結財務諸表の会計主体
・連結財務諸表は誰のもとに作成するのか
①親会社説:親会社の株主のために作成する
②経済的単一体説:親会社と子会社の両方を合わせた利害関係者のため。企業グループとしての報告
・日本では親会社説が採用されてきたが、近年は経済的単一体説に拡大されている
連結財務諸表作成の一般原則
連結財務諸表に関する会計基準
・次の原則を守る
- 真実性の原則
- 個別財務諸表基準性の原則
- 明瞭性の原則
- 継続性の原則
・個別と連結の財務諸表は一貫していなくてはならないので、連単分離の項目は適切に処理しないといけない
・具体的には、退職給付金の負債計上と包括利益の表示の2つ
連結精算表の仕組み
・連結財務諸表は、個別財務諸表を基礎として、修正消去手続きを加えて作成する
・このために必要なのが連結精算表である
連結決算の一般基準
連結の範囲
支配従属関係の判断
・連結の範囲は、持株基準と支配力基準により決まる
・持株基準:株式の半数以上を所持しているか
・支配力基準:持株が足りなくても、役員派遣・技術供与など支配力が実質的にあるか
・支配力基準が多い
支配力基準の適用
・支配側:親会社、被支配側:子会社
・次のいずれかに該当し、明らかに反証がない限り従属関係があるものとする
- 企業の議決権の過半数を持っている(会社だけでなく役員所持分なども含む)
- 議決権が40以上50以下だけど、協力的な株主が他にいたりする場合
- 親会社と緊密な会社があり、合計すると過半数を超える
・なお一定の要件を満たす特別目的会社は親会社からの独立とみなす
連結子会社
・支配力基準により抽出された子会社はすべて連結されなければならない
・しかし重要性に乏しいもの、支配が一時的なものなどは連結の対象外となる
・子会社のうち連結対象は連結子会社といい、含まれないものを非連結子会社という。親会社と連結子会社を合わせて連結会社という
連結決算日
・会計期間は1年間で、連結決算日と呼ぶ
親・子会社の会計方針
・親会社と子会社の会計処理の原則は原則一致していなければならない
連結貸借対照表の作成手続き
・連結貸借対照表は親会社と子会社のものを基礎として消去が必要となる
投資と資本の相殺消去の基礎
100%支配の子会社の場合
・親会社が持つ子会社の株式は同じ会社の資金移動に過ぎないので、消去する
例)子会社の資本 XXX / 親会社の子会社株式 XXX
・しかしこれでは評価差額が発生するので、それは子会社資本に計上する
・子会社の資本金の相手項目はのれんに吸収される
のれん
・かつては、連結調整勘定と呼ばれてきたが、いまでは無形固定資産に分類されている
・のれんは20年以内に定額法などにて償却が必要
・これとは逆に計上される差額を負ののれんという
非支配株主持分
・子会社株式を100%持っていないとき、非支配株主が存在する。その部分を非支配株主持分と(少数株主持分のこと)呼ぶ。
・この時には、2つの評価があり
①全面時価評価法は子会社の資産・負債すべてを支配獲得時に時価で評価する。(経済的単一体説に合う)
②一部時価評価法は子会社資産・負債のうち持分相当だけが時価評価される。(親会社説)
・日本では全面時価評価法が採用される。子会社が企業の集団に含まれる事実を重視し、子会社の債権者ではないからという理由。
・非支配株主が存在する子会社はののれんは、買入のれん説(親会社説)と全部のれん説(経済的単一体説)があり、日本では前者を採用している。すなわち、所持している株式分だけが、親会社の競争力。
連結精算表の利用
作成手順のため割愛。じっくり見て実務を覚えよう。
各種の資本連結の手続き
・親会社の投資と子会社の資本の消去、およびのれんや非支配株主持分の計上などは資本連結と呼ばれる
債務超過の子会社の連結
・子会社が債務超過に陥り、純資産額がマイナスになった場合、機械的に会計処理すると非支配株主持分もマイナスになる。そのため、非支配株主持分を最低額のゼロにして、残額を親会社の負担とする会計処理を実施する。(親会社説)
段階的取得による支配
・2回以上にわたって子会社を取得を段階的に実施した場合
①一括法:支配が確定した日を基準に相殺消去を一括して実施する(経済的単一体説)
②段階法:取得日ごとに子会社における親会社の持分を算定し、株式の取得原価と相殺消去する。(親会社説)
・子会社の資産・負債に関しては全面時価評価法が適用されるため、一括法が適切
支配獲得後の追加取得
・追加取得分は非支配株主持分を減額し、追加取得と相殺すればよい
・この際は時価評価不要
例)非支配株主持分 XXX / S社株式 XXX
子会社株式の売却
・親子関係が解消される場合は、連結子会社から排除すればよい
・親子関係が継続される場合は、非支配株主持分の増加分を計上する
・この時は経済的単一体説に基づき処理が必要
・売却による親会社の持分減少額と売却価額の差額を資本剰余金に振り替える
例)
S社株式 200 / 非支配株主持分 180
株式売却益 10 / 資本剰余金 30
子会社の増資
・子会社の増資分は連結の際に追加的に相殺消去する
債権債務の相殺消去
・社内の取引は内部のことなので消去が必要
割引手形
・手形で取引して受取手形を受け取った側が、銀行に持ち込み、割引した場合は、それを借入金に振り替えなければならない
引当金
・連結会社間での引当金は全額振り戻す
社債
・連結間の社債は相殺する
連結貸借対照表の表示
・基本的には個別財務諸表と同じ
連結損益計算書の作成手続き
・連結損益計算書は、個別宇財務書を基礎として、収益費用の計上、連結会社間の消去、未実現損益の消去を行う
連結会社相互間の取引高の消去
・連結会社間の売上は内部取引に過ぎないので消去する
・また配当金も内部取引になるので消去する
未実現損益の消去
・主に買い手側の棚卸資産の中に、売り手側の未実現損益が含まれる(まだ企業内でしか売れていない)
棚卸資産の未実現損益
・親会社が利益を加算して子会社に販売しても期末に子会社に残っていたら、親会社の利益の中には未実現利益が含まれている。売上原価が過少になってしまうため、以下の仕訳を発生させる必要がある。
例)売上原価 XXX / 棚卸資産 XXX
固定資産の未実現利益
・固定資産取引が行われ、その利益が乗ってる場合は、利益の消去が必要
・減価償却も併せて必要
子会社が計上した未実現利益
・全額消去・持ち分比率負担方式が採用される
時価評価に伴う修正事項
・以下のケースでは利益調整のために、調整仕訳が必要である
①有形固定資産の減価償却費の修正
②時価評価された資産が売却や除却された場合の損益
③低価基準の適用に関しても注意が必要。
税効果会計
・個別財務諸表が各期の活動に起因する税金費用と納税義務額を正しく反映するために、税効果会計が必要であるのと同様に連結財務諸表にも税効果会計の適用が不可欠。
・連結決算での注意点は一時差異である
・一時差異とは、連結貸借対照表の資産・負債の金額と、課税所得計算の結果として算定された資産・負債額との差額を言う。
・連結財務諸表に特有の一時差異は以下の通り
- 資本連結に際し、子会社の資産・負債の時価評価により生じた評価差額
- 連結会社相互間の取引から生じたものとして消去した未実現損益
- 連結会社相互間の債権債務の相殺消去によって減額修正した貸倒引当金
・一時差異に係る税金額は、連結損益計算書に法人税等調整額として計上するとともに、連結貸借対照表には繰延税金資産または繰延税金負債として計上する
連結損益計算書の表示
・個別財務諸表と違う点は以下の通り
- 各項目は科目に明瞭に分類して記載する
- 資本連結により計上されたのれんの登記償却額は販管費に区分する。負ののれんは特別利益
- 持分法による投資損益は営業外に一括表示する
- 親会社株主と非支配株主の両方を合算して当期純利益とし、そこから「非支配株主に帰属する当期純利益」を控除する
包括利益の表示
割愛
連結株主資本等変動計算書
連結株主資本等変動計算書の内容
・連結株主資本等変動計算書は連結貸借対照表上の純資産の部の変化の経緯を表示するもの
利益配当の修正消去
・利益剰余金の増加は親会社の当期純利益なので、修正は損益計算書で行われているので不要
・一方、利益剰余金の減少は処理が必要
①確定方式:会計期間において、確定した配当額が株主資本等変動計算書
②繰上方式:配当の確定時期にかかわらず、利益の分配額がその期間の配当額として認識される。
→会社法では利益を当期に分配しなくてもいいので、合致するのは確定方式
連結株主資本等変動計算書の表示
・個別要件は以下の通り
- 資本剰余金と利益剰余金を、準備金とその他の剰余金に細分化する必要はない。配当は個別財務諸表で制限されるため。
- 連結特有の項目として非支配株主持分や為替換算調整勘定、退職給付に係る調整累計額
- 個別財務諸表で「評価・換算差額等」として記載される項目は、連結財務諸表では「その他の包括利益累計額」に表示する
持分法
・非連結子会社と関連会社の業績は、持分法により連結財務諸表に表示される
持分法の適用会社
・非連結子会社については説明済み
・関連会社とは親会社とその子会社が出資・人事・資金・技術・取引等を通じて財務や営業の方針決定に重要な影響を与える会社を言う。
・具体的には以下の5点に明確な反証がないときには関連会社となる
- 議決権20%以上を実質的所有している
- 15%以上だが、役員人事・融資・技術提供・取引関係などで大きな影響力がある
- 他の緊密な会社と合わせると20%以上所有している、かつ、2の条件を満たす
・これは影響力基準である
・また、これとは別に共同支配企業がある。これは、複数の会社で被支配企業の方針を決定するもの。単独では決定できない。
持分法の会計処理
・個別財務諸表において非連結子会社の株式は原価法で評価される
・これに対して持分法では、投資会社が持ち分に応じて連結決算日に応じて評価額を修正する
連結キャッシュ・フロー計算書
・金融商品取引法により、連結キャッシュフロー・計算書の作成が必要
作成の基礎となる財務諸表
・以下の2通りが考えられる
①企業集団に属する個々の企業の個別キャッシュ・フロー計算書を最初に作成し、基礎とする方法
②連結貸借対照表・連結損益計算書および連結株主資本等変動計算書を基礎として、作成する方法
・前者では消去が必要になる。しかし、これは現実的ではない
・そのため後者が採用される
直接法による作成
手順1)連結貸借対照表の各項目の期首残高と期末残高を比較して期中増減額を把握する
手順2)これらの増減額を連結損益計算書の項目と関連付け、発生主義で測定された損益計算書項目を現金収支額へ変換する
・これに加えて連結特有なのは
- 新しく子会社が連結範囲に含まれることによって増加した資産・負債・のれん・非支配株主持分は純額を子会社株式の取得支出として計上する。
- 子会社が純利益を獲得したことによって増加した非支配株主持分は連結損益計算書の非支配株主に帰属する利益と相殺する
- 関連会社が純利益を獲得したことで増額した関連会社株式は連結損益計算書の持分法による投資利益と相殺する
間接法による作成
・当期純利益を基礎としてこれに所定の調整項目を加減することにより発生主義の利益を現金収支の差額へ変換する
(⊿資金=ー⊿資金以外の資産+⊿負債+⊿資本)→資本=当期純利益-配当金
・したがって、右辺でも金額を明らかにするために
手順1)期首と期末の連結貸借対照表の期首・期末を比較して、変化額を明らかにする
・その後は、調整科目を処理するのみでよい
・連結科目特有のものは
- 新しい連結子会社が含まれることにより増加した資産・負債・のれん・非支配株主持分は取得支出として投資活動の区分に計上する
- 非支配株主持分は負債または資本なので、その増加は資金増を意味する
- 関連会社株式は資産項目なので、その増加は資金減を意味する
連結財務諸表の注記
連結の基本となる重要事項
・①連結財務諸表全体の基本となる重要事項と、②個々の連結財務諸表の事項を分けて記載する
・前者は
- 連結の範囲に関する事項(連結・非連結の子会社数と主要会社名称など)
- 持分法の適用に関する事項(適用会社の数と主要会社の名称など)
- 連結子会社の事業年度等に関する事項(決算日の差異と調整法など)
- 会計方針に関する事項(資産評価基準の変更など)
関連当事者との取引
・連結財務諸表特有の注記としては、関連当事者との取引に関する注記がある。これは、財務や業務上の意思決定に重要な影響力を持つ企業や個人を言う
セグメント情報
マネジメント・アプローチの採用
・企業が多角化すると部門別に区分が必要になる。これおをセグメント情報と呼ぶ
・従来、セグメント情報を開示しない企業が多かったため2010年から注記として提供すべきことと変更
・その際にマネジメント・アプローチが採用された。これは①経営者が報告の対象となるセグメントの区分を決定し、②経営者が開示項目を決定し、③情報作成の多衛野会計方針は企業内での経営管理と同じものを使用する
報告セグメントの決定と開示情報
・事業セグメントとは①収益を獲得し、②業績評価のため経営成績を確認する必要があり、③他とは分離された情報が入手できる、要件を満たすものをいう。
・この事業セグメントのうち、以下の要件の1つでも満たす場合報告セグメントとなる。
- 売上が全体の10%以上
- 利益・損失の絶対額が10%以上
- 資産が全体の10%以上
・また、報告セグメントの外部顧客への売上高が75%未満の場合は、75%に達するまで他の部門を「その他」として一括表示する
連結付属明細表
・連結でも必要
復讐テスト
Q.日本では非支配株主が存在する子会社の資本の評価を全面時価評価法とする理由は何か
→A.子会社が企業の集団に含まれる事実を重視し、子会社の債権者ではないからという理由。
Q.キャッシュフロー計算書を作成する意味は何か
→A.発生主義の財務諸表を現金主義で見せるため