大学院受験用の過去問って少ないですよね。
内部進学ならいいんですが、なかなかアウトプットがなくて知識の定着が難しいと思います。
財務会計の問題は、公認会計士試験や税理士試験に紛れてしまい、大学院受験用がなかなか難しいですよね。
そのため 財務会計の問題と解答 を 作ってみました。
財務会計の定期試験から大学院受験まで使えると思います。
大学院受験の過去問で参考にした大学は京大、関西大学、首都大学東京、横浜国立大学、一橋大学を参考にしました。
解答は参考にしてください。あくまで自己責任でどうぞ。
あまり読みやすさを重視した文章にはなっていません。
また、財務会計については実務で使っていた&独学程度の実力になるので学問的な正しさを担保できるものではないです。
「こんなこと言っているやつもいる」程度に考えてください。
教材を見たので大きく外していないと思うのですが。
間違っていたら、指摘してもらえると嬉しいです。
長いので何回かに分けます
財務会計の問題と解答
出題はおおむね以下の教材の目次に合わせているので参考にしてください。
論点がまたがる問題は適当です(笑)
有形固定資産と減価償却
問題1 有形固定資産の支出
資本的支出と収益的支出の違いはなにか?
解答
資本的支出 … パワーアップさせる → 固定資産の原価算入
収益的支出 … 修繕費など → 費用計上
問題2 減価償却の計算方法
減価償却の計算方法5つ答えよ
解答
①定額法 … 毎年〇万円
②定率法 … 毎年〇%
③級数法 … 5年なら、1年目は5/15,2年目は4/15,3年目は3/15…。15は(1+2+…+5=15)
④生産高比例法 … 利用料/総使用可能
⑤取替法・廃棄法 … レールとか取り換えた時に償却
問題3 減価償却方法の変更
減価償却方法を途中で変更できるのはどういうときか。またその時の会計処理2通り説明せよ。
解答
変更できるケース:市場価格の変動や新技術の開発による変化
会計処理:
・①キャッチアップ法:昔の減価償却も遡って修正する
・②プロスペクティブ法:この先だけ直す
・日本ではプロスペクティブ法採用。理由は、今までの見積もりは正しくて、今度の見積もりが変わっただけなので昔は直す必要なし。
問題4 減価償却の仕訳
減価償却の直接法・間接法とは。それぞれ仕訳を説明せよ。
解答
直接法の仕訳: 減価償却費 xxx / 有形固定資産 xxx
間接法の仕訳: 減価償却費 xxx / 減価償却費累計 xxx
問題5 固定資産の減損
有形固定資産減損会計はどのような場合に実施するのか。減損の兆候と、会計処理を説明せよ。
解答
実施するケース:著しく固定資産の価値が下がった時に実施する。
兆候:
・減損の兆候は、①PLのマイナス、CFの赤字、②事業再編(リストラ)、③経営環境悪化、④市場価格の下落
・会計処理は切放法
問題6 リース取引
リース取引の種類とその特徴を説明せよ。
解答
ファイナンスリース:①解約不能 かつ、 ②フルペイアウト(実質借り手のもの) の条件を持つもの。所有権が移るかでさらに分類される。
オペレーティングリース:上の条件を満たさないもの。
ファイナンスリースは払い終わった後に所有権が移るものを「所有権移転ファイナンスリース取引」、それ以外を「所有権移転外ファイナンスリース取引」という。
ファイナンスリースは所有権に関係なく、実際借り手が使ってるから、もうそれは分割払いとみなしてリース資産を計上する。
問題7 減価償却のキャッシュ・フロー計算書
減価償却がキャッシュフロー増加になるのはなぜか?
解答
有形固定資産に投下され、取得原価として固定されていた資金が、実際に使われたことで利益を生み出した。これを減価償却費として売上高と対応させているので、キャッシュフロープラスになる。このことを自己金融作用と呼ぶ。
問題8 リース取引 過去問 京大
1)
リース取引について次の語句をすべて使い説明しなさい。【貸し手(レッサー)、借り手(レッシー)、ファイナンス・リース取引、オペレーティング・リース取引】 (京大MBA 2017)
2)
ファイナンス・リース取引は通常の売買取引に係る取引の方法に準じた会計処理が行われ、オペレーティング・リース取引は通常の賃貸借取引に係る方法に準じた会計処理が行われる。このような会計処理が行われる理由を説明しなさい。
3)
ファイナンス・リース取引の借手は、リース資産の取得原価を算定する際に原則としてリース締結契約時に合意されたリース料総額からそこに含まれている利息相当額の合理的な見積額を控除する必要がある。そのような処理を行う理由を説明せよ。
解答
1)
リース取引とは、ある特定物件の所有者たる貸し手が、借り手に対して、一定のリース期間にわたりリース物件を使用収益する権利を渡すとともに、リース料を貸し手に支払う義務を負う取引のこと。
ファイナンス・リースは解約不能とフルペイアウト(実際のコストと利益は借り手側に発生する)という条件のもの。
オペレーティング・リースは上記の2つの条件のうちでどちらかでもそろっていないとダメ。
ファイナンスリースにはさらに、所有権移転ファイナンス・リースと所有権移転外ファイナンス・リースの2つがある。
2)
実質的には借り手側が長期に分割払いしているのと同じである。そのため売買取引として処理する。
一方、オペレーティング・リースは通常の貸借関係ととれるので貸借取引として処理する。
3)
リース期間は長期にわたるため多額の利息分が含まれている。もしこれを除去しなければ同一資産が通常の購入の場合とリースの場合で資産価額が異なって計上されることになる。これを防ぐためにリース料総額から利息相当分を控除して計算しなくてはならない。
①貸し手の購入価額が明らかな場合で、かつ所有権移転の場合は、購入価額をリース資産の取得原価とする。
②貸し手の購入価額が明らかな場合で、かつ所有権移転外の場合は、購入価額ととリース料総額の割引現在価値を比較して安い方をリース資産の取得原価とする。
③貸し手の購入価額が不明な場合は、見積もり現金購入価額とリース料総額の割引現在価値を比較して安い方を採用する。
問題9 減価償却 過去問 北海道大学
減価償却の目的と各減価償却の方法の特徴を説明しなさい。(2019 北海道大)
解答
有形固定資産は生産活動や管理活動に利用され、売上収益の獲得に貢献している。したがって有形固定資産の取得原価を資産の利用を通じて達成された各年度の売上収益と対応づけるために各年度にわたって費用配分しなければならない。
①定額法 … 毎年、一定額を減価償却する。取得原価÷耐用年数
②定率法 … 毎年、一定率を減価償却する。償却率=1÷耐用年数×所定倍数
③級数法 … 耐用年数に基づいて算術級数を利用する。
④生産高比例法 … 取得原価×(各期の実際使用料÷総使用可能量)
⑤取替法 … 老朽的部品を取り換えた時にそのコストを費用として処理する。
問題10 付随費用 過去問 関西大学
有形固定資産を購入した場合、取得原価は、購入代価に加えて付随費用を含めるとされている。この付随費用とは何か。また、なぜ含めるのか。(関西大学 2019)
解答
引取運賃・買入手数料などのように企業外部で発生するものと、据付費など資産を仕様可能にするまでの社内で発生するものがある。
理由は、対応原則ではないか?運賃等も資産取得には必要で、その資産の利用による収益に合わせて配分されるべきだからか?
問題11 棚卸資産と固定資産
有形固定資産の減価償却と棚卸資産の原価配分の特徴と違いを答えよ
解答
有形固定資産 … 時間基準に基づく。取得原価・耐用年数・配分方法が決まれば減価償却費は各年度すべて決まる。
棚卸資産 … 費消基準に基づく。配分方法が決まっても期首の時点で金額は確定せず、期中の仕入れ・払出数量・期末在庫量の把握が必要。
問題12 資産交換
有形固定資産の取得を交換によって手に入れた場合、その取得価額の評価はどのように処理すべきか
解答
渡す資産の簿価で評価する。もらう資産は時価で評価し差額を圧縮損として計上することができる。これを圧縮記帳と呼ぶ
利益が出るのは保険差益などかな。
問題13 圧縮記帳
有形固定資産の取得の際に国庫補助金や工事負担金などの補助金を計上するには2つの考え方がある。説明せよ
解答
①資本説:資本剰余金とおしてBSに計上する方法 … 企業を株主から独立した存在として認識する。
→問題点:株主以外からの支出だが利益に還元するので株主に帰属するといわざるを得ない。圧縮記帳で法人税対策が必要。
②利益説:特別利益として損益計算書に計上する … 一旦繰延利益としたうえで徐々に取り崩していく。これにも2種類あり、1)圧縮記帳、2)積立金方式。積立金方式が固定資産の減価償却も正しく、利益も計上できるので望ましい。
無形固定資産と繰延資産
問題1 主観のれん
主観のれんとは何か
解答
無形固定資産として計上はしないが、投資者が自己の判断で価値があると判断できるようにする項目。研究開発費などを指す。
問題2 無形固定資産の種類
無形固定資産の種類と取得原価の計上方法を答えよ
解答
①法律上の権利 … 購入した場合は取得原価と付随費用、自分で作りだした場合は当期の研究開発費と付随費用
②ソフトウェア … 直接開発に係るものの開発費を無形固定資産に計上する
③のれん … 1)純資産法(コスト・アプローチ)、2)収益還元法(インカム・アプローチ)、3)株式時価法(マーケット・アプローチ)
問題3 のれんの償却
のれんの償却の会計処理について日本とIFRSでは処理に差がある。なにか。
解答
日本:のれん(ブランド価値)は徐々に低下するので、減価償却。自己創設のれんを防ぐ。
IFRS:規則的ではないので減損処理として特損に計上
問題4 負ののれん
負ののれんの会計処理の考え方2つ
解答
①負債として処理する
②お安く買えたということで特別利益として計上する ← 日本ではこの手法がとられる
問題5 繰延資産とは何か
繰延資産とは何か
解答
すでに代価の支払いが完了し役務設けたが、その効果が将来発現するため、費用を合理的に配分する目的で経過的にBS資産として計上する項目
問題6 繰延資産の種類
繰延資産として認められるのはどのような種類の費用か答えよ
解答
①資金調達 … 株式交付費、社債発行費
②基礎形成 … 創立費、開業費
③収益増加 … 開発費
問題7 のれん償却 過去問 京大
1)
日本では買入のれんを規則的に償却し必要に応じて減損処理することが求められるが、IFRSでは規則的な処理は不要となっている。規則的に償却する理論的根拠を説明しなさい。(京大MBA 2019)
2)
買入のれんを減損処理する理論的根拠を説明しなさい。(京大MBA 2019)
3)
国際会計基準が規則的な償却を禁止しているのはなぜか説明しなさい(京大MBA 2019)
4)
買入のれんについて減損処理すべき時にされなかったり、遅れたりする理由はなぜか。減損処理が率先して行われるのはどういう時か予想して説明しなさい。
解答
1)
日本では、のれんが表す超過収益力は徐々に消滅するのが通常であるため規則的な償却としており、必要に応じて減損処理する。のれんを償却しないと、自己創設のれんの計上される可能性がある。
一方、IFRSでは超過収益力の持続力は不確実性が高いため耐用年数を確定できず、減損処理することを定めている。
2)
?のれんは不規則に低下するから?
3)
?上と同じでは?
4)
利益操作されてしまうから
問題8 研究開発費 過去問 首都大学東京
IFRSと日本基準における研究開発費の処理の違いについて説明しなさい。(2018 首都大東京)
解答
日本:研究開発費は一律費用計上。①資産計上の根拠となる将来の収益獲得が不確実、②客観的判断が困難、③任意選択では比較が難しい
IFRS:研究費は費用、開発費は次の6要件を満たす場合資産計上する。①技術上の実行可能性、②売却に向けた企業の意図、③売却能力、④将来的便益の蓋然性、⑤完成・使用・売却に必要な資源の利用可能性、⑥支出額が測定可能
日本
研究活動:費用
開発活動:費用
仕掛研究開発費:資産計上(時価)
IFRS
研究活動:費用
開発活動:資産(上記6要件)
仕掛研究開発費:資産計上(時価)
問題9 のれんの取得原価
のれんの取得原価を評価する方法についてそれぞれ説明せよ
解答
①純資産法(コスト・アプローチ):買収される企業の純資産価額をもって、その企業の自己資本とみる方法。時価評価とするか帳簿価額とするかがある。
②収益還元法(インカム・アプローチ):買収される企業の利益やキャッシュフローを業界平均で還元して評価する。
③株式時価法(マーケット・アプローチ):買収される企業の発行済み株式の時価総額
負債
問題1 引当金の条件
引当金を設定できる条件は?
解答
①将来の特定の費用または損失に関するものであること
②その費用・損失が当期または、それ以前の事象に起因していること
③その費用・損失の発生の可能性が高いこと
④その金額を合理的に見積もることができること
問題2 引当金の種類
評価性引当金と負債性引当金の特徴を答えよ
解答
評価性引当金:資産から控除する引当金。貸倒引当金が該当する。
負債性引当金:負債の部に計上する。また、「条件付債務」(退職給付金、製品保証引当金など)と「債務以外の経済的負担」(修繕引当金)がある。
債務以外の経済的負担 … 法律上条件付債務ではないが、将来資産の減少をもたらすことが合理的に予想できる経済的負担
問題3 資産除去債務
資産除去債務の「引当金処理」と「資産負債両建処理」をそれぞれ説明せよ
解答
①引当金処理:前もって支出額を見積もり、それを期間配分して計上する。
仕訳 → 除去費用 xxx / 資産除去債務 xxx
②資産負債両建処理:負債の部に悪化つして計上。その額を資産取得価額に計上する。ただし、割引現在価値で計上するため、毎年資産除去債務を増やす。
仕訳 → 資産除去債務調整額 xxx / 資産除去債務 xxx
問題4 引当金 過去問 関西大学
引当金の設定対象となりうる事象が全くないとは言えない場合、引当金の設定は許されるか。(関西大学 2018)
解答
許されない。発生可能性が高くないから。そのような偶発債務に備える場合は、利益の一部を任意積立金として留保すべきである。
問題5 税効果会計
税効果会計における会計と税務の差異の種類とその会計処理について説明せよ
解答
①永久差異:損益計算書上の収益・費用額と課税所得上の益金・損金額に際が存在するため永久に解消されない差異。交際費の扱いがそれぞれ違うなど。
②一時差異:当期に生じた不一致が将来の会計期間において解消すると予想されるタイプの差異を期間差異という。税務上認められる以上の貸倒引当金を設定したなど。期間差異に加えて資産・負債評価差額を合わせて一時差異と呼ぶ。
・将来加算一時差異は繰延税金負債という形で処理する。相手勘定は法人税等調整額
・将来減算一時差異は繰延税金資産という形で処理する。相手勘定は法人税等調整額
問題6 繰延税金
繰延税金の金額計算法には適用する税率の違いにより繰延法と資産負債法がある。それぞれ説明せよ
解答
繰延法:当期の税引き前利益に対応しない部分を繰り延べるので一時差異の発生年の税率が適用される
資産負債法:将来期間における前払い税金の回収額を重視するので、一時差異の解消年の税率によって計算する。日本では資産負債法
問題7 退職給付引当金
確定給付制度のもとでの退職給付金制度の計算方法を勤務費用と利息費用という言葉を使って説明せよ。
解答
①定年退職時の退職金を見積もる 例:1750万円
②各年度に期間配分する 例:50万円(=1750÷35年)
③将来時点の価値になるため現在価値に割り戻す。これを1年目の勤務費用とする。 例:95,177円(=50万円÷(1+0.05%)^34)
④2年目は③にプラスして、③の割引現在価値に利息費用を積み立てていく必要がある。 例:99,936円(=50万円÷(1+0.05%)^33)+4750円(=95,177*0.05)
問題8 退職給付引当金の差異
退職給付金の差異が発生する原因とその際の会計処理について説明せよ
解答
①過去勤務費用の発生と②数理計算上の差異。前者は支給水準の変更など。後者は割引利子率の予測値と実績値の差異。
対応は、1)一括して修正するか、2)各期将来年度に案分していく方法。個別財務諸表では後者が選ばれる
加えて、連結財務諸表では、積立金状況を明確にするため、「退職給付に係る負債」勘定にて調整する。
参考文献
こちらに載せています