モンテです。今日は 問題解決のための 開発戦略や開発政策 をご紹介します。
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目次
問題解決のための 開発戦略や開発政策
この記事では大きく
・技術革新
・貧困層への援助
・マイクロクレジット
・共同体と開発
・開発援助とガバナンス
について扱います
技術革新・普及とその制度
技術革新の理論
・後発性の利益:先進国が開発した技術や知識を、先進国程コストをかけずに利用できる。ガーシェンクロン。
・開発における技術は「アイデア」のこと。新規の間の積み重ねが経済発展に大きな役割を果たした。アイデアは文字にする、形にするなどして初めて価値が出る。
・アイデアの蓄積が知識である
「知識は…水だ。独占してはいけない。そうだろう?」byぺこぱ
これ大好き。ハイ余談。
特許制度の意義
・知識は公共財的性質を持っているので、市場競争に任せると失敗してしまう。
・公共財は2つの性質から成り立っている
- 非競合性
- 排除不可能性
・特許制度による技術開発の利益の保護は、d苦戦という形で取引を制限することで、アイデアに対して正当な対価を得ることを意図している。
技術開発と普及のトレード・オフ
・抗エイズ薬の無償提供により多くの人は恩恵を受けた
・一方で、抗エイズ薬では特許が適用されず利益が出ないのでインセンティブを無くし、新規参入が弱まる可能性がある
・米国において基礎研究の分野で公共部門が大きく貢献していることがある
・しかし、商業化や臨床実験は民間の方が向いている
開発促進のためのプッシュ・プル型
・プッシュ型:成果が上がる前から研究支援する。
・プル型:成果が上がった後に報酬を払う。特許制度は市場から報酬を得るのでプル型
途上国への技術移転と経済成長
・技術導入の時は、先進国の技術をそのまま持ち込んでも最適とは限らない
・気候、自然条件、さらには労働者の技術にも左右される
・開発途上国の環境に合致した適正技術が導入されなくてはならない
・途上国では安価に取得できる生産要素に関連した技術革新が多い。
これを誘発的技術革新
または、方向づけられた技術変化
と呼ぶ
・また、途上国は知的財産権保護が遅れているため、先進国による途上国向けの技術開発が遅れると指摘されている
貧困層への援助
開発目標としての貧困削減
・政府開発援助(ODA)は以前に比べて成果を問われる
・ミレニアム開発目標
- 極度の貧困と飢餓の撲滅
- 初等教育の完全普及
- ジェンダー平等、女性のエンパワーメント
- 子供の死亡率削減
- 妊産婦の健康の改善
- HIV/エイズ、マラリア等の疾病の蔓延防止
- 持続可能な環境づくり
- グローバルな開発パートナーシップ構築
・2015年にはこれに加えて、地球規模の自然環境改善として、持続可能な開発目標(SDGs)が採択された
貧困層への所得移転政策
・貧困層への所得移転政策は非効率が生じてしまう(援助金への依存など)
・そのため、ワークフェアによるセルフ・ターゲティングが有効である
・ワークフェア:労働を提供することで初めて受給資格を得る
・ワークフェアの賃金は非貧困層にとっては低すぎて魅力がないが、貧困層にとっては魅力的な金額とする
・これによって労働インセンティブを阻害せずに補助することができる
・インドやバングラデシュで公的雇用促進事業として実施され、膨大な数の貧困層が受益者となっている
マイクロクレジットの経済学
マイクロクレジットのメカニズム
・少額資金を5人組貸す
・貸すのは個人だが返済はグループなので連帯責任を負う
・また、血縁的関係がいとこより近いとダメ。土地の面積が0.5エーカー以上でも貸さない。
・ここで5人組を作らなくてはならないのは、セルフ・ターゲティングする効果をもたらす
要はそこまでめんどくさいならやらないって人をはじく
グループ融資
・相互選抜:自分たちで仲間を組むので、貸し手にはわからない情報を駆使して自分の仲間を集める(慎重になる)
・相互監視:期待値の大きい(安全な)事業が選ばれるように、仲間が監視する
・履行強制:返済できるにもかかわらず、戦略的債務不履行を防ぐことができる
逐次的融資拡大
・融資額の上限が徐々に引きあがるため、リスクが高いプロジェクトを避ける傾向になる
返済猶予期間なしで回数の多い分割払い
・毎週返済など
・これは借り手の情報を早く開示して、リスクの高い借り手の発見を容易にする
変化するマイクロクレジット
初期のマイクロクレジットの課題
1.貸し手の側は採算が合わず、外部からの資金提供に依存する
2.必ずしも生産効果や雇用創出効果の高い分野への投資に使われるわけではない
3.マイクロクレジットであっても極貧層は融資を受けにくい
4.借り手の非金銭的負担が大きい
マイクロクレジットの新潮流
・2015年にマイクロクレジットによって生活を向上させる効果は平均的には検出されないか、検出されても小さく貧困を恒常的に脱却させる効果は検出されないと結論付けた
・一方でこれは、マイクロクレジットの長期的インパクトや借り手以外に生じる効果(マイクロクレジットの普及によって地域の賃金が上昇するなど)を無視している。
・マイクロクレジットのアクセスが増えることは貧困層にプラスのインパクトとなるという結果が、インドにおけるマイクロクレジットの禁止による自然実験の結果から明らかになっている
・毎週返済を毎月返済に変えても返済率には影響なく、借り手のストレスのみを減らすことができること
・返済猶予期間を設けることで借り手がより有効にマイクロクレジットを利用できること
・農村での就労機会が減る時期に返済を猶予する設計は、返済率に悪影響を与えず、借り手の消費をやや増やすこと
などが明らかになっている
・またマイクロクレジットは「コミットメントのために工夫された強制貯蓄」という意味があることが分かった
・つまり、実はそもそも毎週貯金する余裕はあったが、一人で続けるには難しく、グループによってそれが達成されたということ。
共同体と開発
貧困と環境悪化の悪循環
・貧困層は森林や共同牧草地などの共有資源(ローカル・コモンズ)に依存してきた
・凶作の影響を受けやすい
・しかし一旦環境の悪化により経済的利益が低下するとますます窮乏化する
・将来のことではなく、目の前のために過剰利用をしてしまい悪化する
・これをコモンズの悲劇と呼ぶ
開発援助とガバナンス
汚職の本質とガバナンス
・ガバナンス:国民の意思を実現できるように、立法・行政・司法の各機構をコントロールすること
・国によっては、公務員の給料が低く賄賂によって民間と同等レベルまで引き上げている国もある
実質汚職指数
・実質汚職指数は主観的データに基づく部分も多いが、汚職の性質上それが一定の役割を果たす
世界銀行の国別政策・制度評価(CPIA)指数
・世界銀行グループの1つ、国際開発協会が作成している国別政策・制度評価指数
賄賂と資源配分
・賄賂は公的財産から私的利益を得るという点で窃盗と言えるが、非効率な資源配分を起こしているとは必ずしも言えない。なぜならば、
- 賄賂の金額が完全競争の場合、より低い賄賂で(効率的な)サービスを供給できる人の方が市場取引を成立しやすい
- 汚職公務員による所有権移転は、公務員が供給する財・サービスの配分効率性を阻害するとは限らない。コースの定理
・しかし、実際には賄賂の本質を見れば資源配分効率を下げる可能性が高いことがわかる
- 汚職は秘密裏に行わなければならない。そのため、秘密が露見しやすいサービスから、露見しにくいサービスに生産活動の重点が移動する可能性がある
- 秘密裏なので、完全競争がなされることがあり得ない
- 公共サービスを供給する部局は1つなので競争が起きない(独占)
ガバナンスを改善するために
・制度の透明化が求められる。この要請を説明責任と呼ぶ
・公務員の賃金が安すぎてもダメ
・マスメディアの努力が評価されるが、逆に汚職を助長することもある
グローバリゼーションと途上国
・グローバリゼーションのメリットの一つは地球規模の効率化
・またアイデアのグローバリゼーションの効果も大きい
・もう一つのメリットは、所得格差の縮小
・しかし実際にはモノの移動だけが自由で土地や労働力は完全に自由ではない
・要素価格均等化定理:生産要素の移動がなくても、生産物が移動することによって分業・要素価格均等化が起きる